農業法人稔樹 取締役

藪西 史丈さん

Profile
三木市志染町出身。農学部を卒業後、兼業農家としてキャリアをスタート。20代半ばで専業生産者となり、地区の次世代を牽引する存在に。離農地の集積、米粉スイーツの開発など、地域の未来を見据えた新事業を展開中。


誰もやっていないから、おもしろい。

少子高齢化が進む中、農村では跡継ぎ問題が深刻化しています。まわりを見回しても、農家を継ぐ同世代はほとんどいません。親世代も「農業は儲からないから」と、継承には消極的です。しかし、思うように儲からないのは「従来のやり方」が時代に合わなくなったせいかもしれない。今の時代に合うやり方を見つければ、新しい未来が開けるかも……。そんな考えから、水稲以外の作物に手を広げたり、農業法人を立ち上げたりと、さまざまな試みを行っています。誰もやっていないからこそ、おもしろい。その結果、最初は0.5haほどだった耕作地が、今では甲子園球場3個分の13haまで拡大。離農する高齢者から農地を託されるケースも増えており、できる限り対応したいと思っています。

山田錦の新たな可能性を開く
米粉で作るバームクーヘン

若者のアルコール離れやコロナ下での需要の落ち込みなど、日本酒を取り巻く環境は決していいとは言えません。そこで、幅広い年代層に訴求するアイテムとして、米粉を使ったスイーツを開発。大阪の菓子事業者とともに、原料の栽培から製造、販売までを手掛ける農業法人を立ち上げました。山田錦の米粉で作るバームクーヘン「山田錦バウム」は、しっとりとした食感が持ち味で、2022年の「バウムクーヘン総選挙」ではベスト7に入賞。グルテンフリー食材として、食物アレルギーや食事制限に悩む人にも好評です。何より地域の皆さんがスイーツ事業の成功を喜んでくださり、雇用創出にも貢献できているのがうれしいですね。

こだわる点は人それぞれ。
地域の農業存続のため、
自分の信じる道を行く

吉川地区の生産者には「特A(※)を取らなくてはいけない」という強い使命感があります。もちろん「質」による差別化は重要ですが、僕の運営する農業法人では「農地を増やすこと」を最優先に、作業効率や収量の最大化に努めています。というのも、農業を持続可能な産業にし、地域の暮らしを守ることを最終目標としているからです。今後、団塊世代の離農が進むにつれ、ますます農地が余ってくるでしょう。それらを休耕地にせず、地域の農業を守っていくために、水稲以外の作物の栽培や農作業におけるIT・スマート化の推進など、時代に即した改革を推し進めていきます。

※特A
兵庫県が付与する山田錦栽培地の格付け。最上級の特A地区は、三木市吉川、加東市社など、北播磨に集中する。

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